昨年末のこと
以前制作した大型作品の注文を頂きました。
この様な時期に大型の作品のご注文は
本当に嬉しい出来事です。
けれど昨今、
体調が思わしくなく、痛みや痺れなどで
思う様に作業が出来ず
キモチもだいぶ内向きになっておりましたので
果たして刷り増しが出来るだろうか?
と不安になりました。
嬉しいご注文に即答出来ず
一晩考えてみよう と。
実際ほんとうに寝ている間もアレコレと
考え続けた一晩でした。
よく眠れていなかったにも関わらず
次の日の答えは
「まぁ やってみよう。そして出来なかったら
申し訳ないがお断りすれば良い。やらずにお断りするよりきっと良い!」でした。
3年くらい前に
既に大きな作品での刷り時に
版画用紙を版面に置く作業に苦労していた記憶があります。銅版の刷りでは用紙を湿す必要があるので、紙は重く(実際の重量というより紙自体が柔らかくなって支えるのが難しい)なり
定位置にセットするのが上手くいかず失敗を繰り返しました。
版面にインクを置き拭き上げ、更にローラーで凸版を入れるのも、大きな作品では一点行うのに2時間くらいかかります。
紙を置くのも、凸版を入れるのも
上手く行うには所謂「気合い」の様なモノが必要です。体力と気力の調合(少し気力が上回る)
が上手くいっていないといけない。
ここ何年かの 上手くいかない記憶と思う様にならない体調が
私の気力を萎えさせていました。
けれど
そんなネガティヴを払拭すべく
良い機会を頂いたので
キモチが萎えないよう新年より刷り増しに取り掛かりました。
まずは版画用紙の湿し。
久しぶりに大きな紙を扱うのは
思っていた以上に苦労致しました。
湿しの段階でめげそうでした。
私の場合、腐食が深い版なので紙の湿しは慎重に充分致します。紙の種類にもよりますが、刷りに入る3.4日前から刷毛などで一枚づつ湿して重しをして置きます。
その後
気力を保ちつつ
余計な心配をしない様努め
刷りに入りました。
10年くらい前の作品で自分でも好きな作品の一つですが、今では絶対に創れないものだなぁと
何かフシギな気持ちで版を眺めました。
色数も今だったら違っているだろうな とか。
自分の作品ではありますが
今より余計なことを考えず
ぐんぐん制作していられたその時代の良さに
再び接することで
蘇るエネルギーをもらえた気がします。
刷りの過程では
今回、気力が充実していた事もあり
昔より落ち着いて進めて行くことで
大きな失敗もせずに済みました。
後はインクの乾燥を待って
コラージュを施し
2つのパーツから成るこの作品を
張り合わせる!
この作業がもしかしたら
1番苦手かもしれません。
作品を張り合わせる や 額装する など
手先の技 わ必要とすることは
私の範疇ではない!けれど作品を仕上げるには
必要不可欠なコトではあると理解しています。
また
気力を充実させて精一杯やって
仕上げたいと思っています。
うまく行きますように!
上手く行かなくても
今回この刷りを行う事で
自分に対する自信(まだ出来る!という)を
取り戻せたのは大きなシアワセです。
今、この機会与えて下さった事に感謝しています。不安はだいぶ遠のきました。
今、この作品をまた刷る意味は
本当に深いです。
今年はきっと素敵なモノが創れると思います。
詩篇の一節をテーマにした その作品は、
その後、生きて行く上での価値観を大きく変えることになった3.11の震災後に制作したもので
詩篇の一節がテーマとなっています。
幸いなことよ。
悪者のはかりごとに歩まず
罪人の実に立たず
あざける者の座に着かなかった
その人。
その人は流れのほとりに植えられた木。
時が来ると実がなり
その葉は枯れることがない。
ほとりに植える 樹に 75.5×100am